(株)貧困大国アメリカ
5年目で3冊目になる著者の「貧困大国アメリカ」シリーズの最新刊にして完結編。
第1作目では病気1回で破産の医療制度や,民間警備会社が請け負う形となったイラク戦争あたりが。第2作目では将来の夢に向かって苦労して大学進学したものの,学費ローンの借金漬けにされてしまう若者の悲惨さなどが(自己破産も出来ないらしい),それぞれ印象的だった。
2週間ほど前に発売になった本作では,主に農業と食品の話。
メジャーといえば何といっても昔からエネルギーと食物。そういう意味では米国流資本主義経済の超巨大化した家元の為さりようが,たぶん歴代大統領まで抱き込んでいかに酷薄なものかがよく分かって,一時の怒りとその後の無力感・不安感にさいなまれる事請けあい。
「アメリカ国民にとっての選択肢は、大金持ちに買われた小さい政府か、大金持ちに買われた大きい政府か、という二者択一になりました」とは本文227ページ、窮してもこの辺りのジョークはさすがアメリカ。
こちらは本文42ページに出てくる鶏の写真。成長促進剤を注射される現代の工業式養鶏場の鶏は体重が25年前の8倍。内臓や骨の成長が追いつかずに、大半が6週間目で足が折れたり肺疾患にかかってしまうとのこと。
さらにその工業式養鶏場というのがまた凄くて、隣で死んでもその上に鶏が乗って飼育が続けられる様な狭くて劣悪な環境で、産卵刺激のため1日電気が点きっぱなし、ストレスから来るツツキ合いを回避するためあらかじめクチバシは切除されているとか、アメリカの抗生剤消費の7割は家畜用だとか。
こうした養鶏場を全米各地で営む多くは家族経営の業者が、一昔前の農奴のように巨大資本にがんじがらめに支配されていて、例えば100万ドルの借金をさせられて昼夜を問わぬ過酷労働の結果、業者の収入は1万ドル台で自転車操業が延々に続くだとか。
・・まぁヒドい話だが、それでも世界人口やがて80億人が飢えずにタンパク質を補給するためには、こうした手に頼るしかないのかも知れないとの考え方も有り得る(今さら皆でイナゴを食べるのも何だし、さすがにまだ動物自体には遺伝子組み換えはされてないらしいし、でも「GMサーモン」みたいに魚類ではそうしたモノも現実化しているみたいだケド、、)。
・・・もう一方で真に恐ろしいのは、主にアングロサクソンの1%の勝ち組の方々が行使している、慎重かつ狡猾に法を自分ら有利に設定させ、いったんルールが出来た暁にはその枠内ならどんな事でもやれるし実際に行って、同族だろうが友人や隣人だろうが地に落とす。といった感じの飽くなき闘争心というか地位・金銭という形で得られる栄誉希求性。要するに端から見れば強欲性だが、絶対それと自分で認めない強靱な自己規定とそれを補強する文化・宗教を有しているところ。やはり異人種、ここはぜひ「困った時はお互い様」という言葉を一度じっくり学習してもらいたいものである。
ちょうど来週から始まるTPP交渉はまさしくこうした話だろうし、「尖閣を守ってもらうならちょっとくらい仕方ないか」とか思っているととんでもない事になりそうで、心配ではある。
「アメリカの零細養鶏業者」や「戦後にGM種子を売りつけられるイラクの農民」あるいは「日米和親条約」とかみたいに成らないためには、ここが踏ん張りどころか?
第1作目では病気1回で破産の医療制度や,民間警備会社が請け負う形となったイラク戦争あたりが。第2作目では将来の夢に向かって苦労して大学進学したものの,学費ローンの借金漬けにされてしまう若者の悲惨さなどが(自己破産も出来ないらしい),それぞれ印象的だった。
2週間ほど前に発売になった本作では,主に農業と食品の話。
メジャーといえば何といっても昔からエネルギーと食物。そういう意味では米国流資本主義経済の超巨大化した家元の為さりようが,たぶん歴代大統領まで抱き込んでいかに酷薄なものかがよく分かって,一時の怒りとその後の無力感・不安感にさいなまれる事請けあい。
「アメリカ国民にとっての選択肢は、大金持ちに買われた小さい政府か、大金持ちに買われた大きい政府か、という二者択一になりました」とは本文227ページ、窮してもこの辺りのジョークはさすがアメリカ。
こちらは本文42ページに出てくる鶏の写真。成長促進剤を注射される現代の工業式養鶏場の鶏は体重が25年前の8倍。内臓や骨の成長が追いつかずに、大半が6週間目で足が折れたり肺疾患にかかってしまうとのこと。
さらにその工業式養鶏場というのがまた凄くて、隣で死んでもその上に鶏が乗って飼育が続けられる様な狭くて劣悪な環境で、産卵刺激のため1日電気が点きっぱなし、ストレスから来るツツキ合いを回避するためあらかじめクチバシは切除されているとか、アメリカの抗生剤消費の7割は家畜用だとか。
こうした養鶏場を全米各地で営む多くは家族経営の業者が、一昔前の農奴のように巨大資本にがんじがらめに支配されていて、例えば100万ドルの借金をさせられて昼夜を問わぬ過酷労働の結果、業者の収入は1万ドル台で自転車操業が延々に続くだとか。
・・まぁヒドい話だが、それでも世界人口やがて80億人が飢えずにタンパク質を補給するためには、こうした手に頼るしかないのかも知れないとの考え方も有り得る(今さら皆でイナゴを食べるのも何だし、さすがにまだ動物自体には遺伝子組み換えはされてないらしいし、でも「GMサーモン」みたいに魚類ではそうしたモノも現実化しているみたいだケド、、)。
・・・もう一方で真に恐ろしいのは、主にアングロサクソンの1%の勝ち組の方々が行使している、慎重かつ狡猾に法を自分ら有利に設定させ、いったんルールが出来た暁にはその枠内ならどんな事でもやれるし実際に行って、同族だろうが友人や隣人だろうが地に落とす。といった感じの飽くなき闘争心というか地位・金銭という形で得られる栄誉希求性。要するに端から見れば強欲性だが、絶対それと自分で認めない強靱な自己規定とそれを補強する文化・宗教を有しているところ。やはり異人種、ここはぜひ「困った時はお互い様」という言葉を一度じっくり学習してもらいたいものである。
ちょうど来週から始まるTPP交渉はまさしくこうした話だろうし、「尖閣を守ってもらうならちょっとくらい仕方ないか」とか思っているととんでもない事になりそうで、心配ではある。
「アメリカの零細養鶏業者」や「戦後にGM種子を売りつけられるイラクの農民」あるいは「日米和親条約」とかみたいに成らないためには、ここが踏ん張りどころか?
by ichiro82
| 2013-07-16 18:51
| 書評